特許の研究

今回のシャツ作りも特許を元に企画しました。

1929年に出願されたシガレットポケット。古着市場では「ガチャポケ」と呼ばれ、そのユニークなデザインから絶大な人気を誇ります。

ポケットの作り方、その意味が事細かに記載されています。

実際、1930年のアドを見ると、前回作ったやはり1929年の三日月型補強布のついた特許と、今回のシガレットポケット、両方のディテールを持つシャツが掲載されています。

 

ということで、今回は、このアドと特許を元に、前回の1929 Patented Shirt+Cigarette pocketというワークシャツを企画しました。

ただ、これから夏と言う事もあり、補強布無しのバージョンもラインナップに加えました。

まずは、サンプルを作り始める前に仮生地でシガレットポケットの部分縫いをしました。

写真は、フラップとその型紙です。

特許には「フラップは四角い布から作る」とあります。

そこで、ひとまず正方形の布を型紙で作り、裁断しています。

 

つぎに、これをし上がりの寸法に四隅を折って行きますが、ここでひと手間。

単純に縫い代を定規などで測りながら折ると誤差が出ます。

そこで、「上がり型」と呼ばれる、アイロンで折った後の形を厚紙で作ります。

 

 

実際に、上がり型を入れて折り、その型を抜いたのが下の写真です。さらに、それを半分に折り、フラップの形になりました。

フラップの折り具合は、実際に見せてもらったオリジナルを参考にしながら決定しました。

面白いのが、特許とは、まったくその折り具合に差があるところです。

特許はあくまで製法と、それを解説するイラストで、実在した物とは差があるものも多いです。

実際、今回のイラストにも実物ではあり得ないステッチが描かれていたりしています。

そのあたり、実物と特許をよく研究しながら、作らないと特許だけでは作れなかったりします。

 

解説も付記されてはいるのですが「ここはスムーズにつながるように」とか「こういう意味があります」といった内容が多く、実際の作り方は「26から27に向かって対角線上に折る」とか実にそっけない内容です。

また、内容自体、実に読みづらいらしく、アメリカ人の同好の士も

「イラストはわかりやすいけど、文章は良く意味の分からないところもあるね」などと言っています。

ステッチを入れ終わった写真です。

若干、右側の端がはみ出してしまっているのは、アイロンのみで作るので工程の難易度が高いためです。

この為、さらに一工夫。先の上がり型の裏側にあたる部分の一辺を0.5ミリほど削り、ここがふきださないようにサンプル作成時には修正を入れています。

これは、実際に何千枚とシャツを作った工場長から教わったアイデアでした。

この手間のかかるフラップ、BIGYANKも採用は一時期で、すぐに、ラウンドした形の二枚物のフラップに移行していってしまったようです。

次に、ポケット本体側です。

特許のように、ずらした状態で一枚の生地を折ります。



ポケットの口を縫います。

裏側の布ははねておいて、ポケットの口だけを縫っています。

さらに、これから折られていく部分に仮止めのステッチを入れます。

 

左右を折ります。

ちょうど、特許の右下のイラストと同じ形になっています。

ここまでで、フラップ・ポケット本体の部品が完成。

フラップにはあらかじめ穴を開けておきました。

ポケット本体を身頃にコを描くようにステッチで止めつけていきます。

最初に外側を一回、それから内側をもう一回走りました。

ポケットの底は、最初に折った通り、底はあるけれど、身頃には縫いつけられていません。

この空間が、たばこが湿るのを防ぐ、ベンチレーションの役割を果たす・・・と特許にはあります。

さらに、フラップをやはりダブルステッチで縫いつけます。

ポケット本体の外側面のステッチがギリギリ隠れるか否か、といった位置にフラップはついています。

これも、フラップを開けずに煙草を抜きだし、さらにそこが空気の循環を助け、たばこが湿気るのを防ぐ・・・と特許にはありますが、ちょっとコジツケとも言えるような解説です。

ただ、特許を守って作ったおかげで、ビンテージの実物に近い雰囲気を持ったポケットが完成しました。

 

How to make them?
ワークシャツが出来るまで

特許・AD・シガレットポケット

生地・付属
縫製

 

Lineup-ラインナップ
 

 

Detail-各部詳細

     


 

 

 


 

Workers