縫製:ヒヨク・持ち出し

次は、ヒヨクと持ち出しです。

a,左身頃のボタンホールフライ(ヒヨク)は生地を二重使いすること

b,前端は地縫いし、返し、1/8インチステッチを入れる

ここまでがヒヨクです。

c,右身頃のボタンフライ(持ち出し)は表生地と、裏に綿のドリル(スレキ)で裏打ちする

d,スレキは前端で持ち出しと地縫いし返して1/8インチステッチを入れる。スレキは持ち出し押さえのステッチにかかるように、広めに縫い代を取る

以上が持ち出しです。

という事で、ヒヨクを地縫いし、ひっくり返してステッチを入れました。

次にボタンホール、これはeyelet-taper-bartypeとあり、いわゆる、日本の岡山地域でいう

「ハト目流れ」という形状のホールです。

ホールはMIL-T-2064Aでは、下4つ、ウェストに1つの計5つ、サイズ38以上は下5つ、ウェスト1つの計6つです。

ただ、今回のLot800ではシルエットを変更し、股上を浅くしていることから、ホールの数を合計4つに減らしています。

次に、見返しとヒヨクを一緒にオーバーロックします。

ヒヨクの幅は1と3/4インチ〜1/8インチまでの間でなくてはならないとあります。

1と3/4インチ、つまり4.445センチです。

さて、出来上がりは・・・ぴったりです!

そもそも、型紙を作る段階でこの工程表を読み込んで、各部の寸法を決めていきました。

縫製でも誤差が出ず、ほぼ寸法通りに上がっていることを、こんな風に各工程ごとに、作っては測りしながら進めていきます。


次に持ち出しです。

表地と、ドリル(スレキ)の裏うちです。

指示通り、裏側は持ち出し押さえのステッチが乗るように、縫い代を多めに取っています。

 

まずは、フロントエッジ(前端)を地縫いして返し、1/8ステッチを打ちます。
次に工程表の右・左のフライを身頃につける工程です。

右身頃と持ち出しです。

画像がないのですが、まず最初に右身頃と持ち出しの表のみを地縫いし、次に押さえのステッチをかけて行きます。

持ち出しのステッチをかけ終わったところです。

前端は裏から縫っているので沈み込んだようなステッチが、持ちだしと身頃の接合部は表から縫っているので、綺麗なステッチになっているのがわかります。

洗う前なので、まだ針の穴が残っていますが、洗うと目がつまり同じ糸で縫ったにも関わらず、微妙に雰囲気の違う、表目、裏目の対照が出ます。

 

次に、ヒヨクと見返しを左身頃につけていきます。
まずは地縫いをして

アイロンを使いひっくり返します。

かなり、トラウザーらしい雰囲気に近づいてきました。

ここで、次の工程、クロッチシームの際に必要になる、開き止まりより下、小股部分の倒しアイロンも同時に行っています。

次に、先ほどの地縫いした縫い代を片側にすべて倒し・・・
表に返して・・・
ヒヨクを見返しに留めるタックを入れます。

裏から見るとこの通り、すべての縫い代をまとめて押さえています。

この部分に「隠しコバ」という表には出ないコバステッチを入れることがあるのですが、MIL-T-2064Aでいえば、このタックが隠しコバ同様に、フロント周りの縫い代をまとめて押さえる役目を見事に果たしています。

最後に、ヒヨクを押さえるステッチを裏から打ちます。

ここでも面白いのが、2と1/2インチ、つまり6センチ程度のところで押さえのステッチをやめていることです。

裏から見るとこんな感じです。

このように指が入ります。

後でここに腰裏のスレキが流し込まされ始末されるためです。

 

縫製:小股・クロッチシームの縫製

クロッチシーム、つまり開きどまりより下の部分で前身頃の左右をつなぎます。

まず最初に、右身頃側の「ニセ巻き」と呼ばれる始末をするためのステッチを1/8インチでかける旨が書かれています。

次に、左身頃の端を折って、右身頃をキャッチしながらダブルステッチで縫うとあります。

このさい、左・右身頃の地縫いをする旨は書かれていませんが、私はニセ巻き始末をする際には、地縫いを入れるようにしています。

というのも、押さえのステッチだけだと、ステッチが切れた際にいきなり小股部分があいてしまいます。

そこに一本、地縫いが入っていれば、万が一押さえステッチが切れたとしてもまだ地縫いが残るので、何より強度があがり、またリペアも容易になります。

という事で、くっつける寸前の小股、クロッチシーム部分です。

いきなりくっつけてしまいました。

ここは、ある意味パンツ作りで一番難しいというか、コツのいる作業なので写真を撮る間もなく、一気に仕上げてしまいました。

本来は、人間の股ぐりに沿っていく部分を無理やり平面に置いているため、激しく皺が寄っています。

あの皺がお尻に向かっていく生地になります。

 

縫製:巻き縫い


工程の18では、内股、脇、尻ぐりを巻き縫いします。

巻き縫いの幅は1/4〜5/16までと、ある程度の幅が持たされています。

というのも、この針巾をゲージと呼ぶのですが、一般的なものでも1/4、9/32、5/16と様々な幅があります。

本来は、生地の厚みなどによる使い分けがされているのですが、工場によってうちは1/4が多いとか、このラインには9/32しかないとかがあるのです。

また、ゲージを交換することもできるのですが、とても手間がかかります。

そこで、ある程度の幅を持たせた仕様にしたのではないか・・・と想像ができます。

 

後ろ身頃はダーツを取ってから、フロントのウォッチポケットと同じ要領で極細の玉ブチを作っておきます。

巻き縫いですが、指示では30TEX、現代でいう50番糸を使うとあります。

ただ、50番では細すぎて、脇の固い部分で糸が切れてしまいます。

そこで、30番糸の糸調子をぎりぎり強くして縫ってみたのが、画像の右です。

左がオリジナル。

右はまだ縫ったばかりなので、針の跡が残っていますが、これも洗うと目がつまり左の風合いに近づきます。

目の細かさ、糸の太さともに良い線をいっているのではないでしょうか。

脇・内股・尻ぐりを巻き終わったところです。

かなり、トラウザーに近づいてきました。

 

縫製:腰裏

次は腰裏の始末です。

まっすぐに切ったドリル(スレキ)の上下を折り、上下を身頃とステッチでたたきつける。

その際、ステッチ間は1-1/2〜1/8インチで行い、途中でベルトループをはさむとあります。

 

 

という事で登場したのがまっすぐに切ったスレキとそれを折るためのラッパ(金具)です。

仕様によっては、このラッパで折りながら直接、関西スペシャルやユニオンスペシャルの帯びつけミシンを使って帯び始末をします。

 

今回は、そのラッパの下側だけを使って腰裏を折っていきます。

ステッチ間が3.8センチほどという指示なので、若干の余裕を見て4.4センチ上がりのラッパを使っています。

ラッパを通った生地は自動的に折られているので、これにアイロンを当てて、生地を正確に、素早く折っていきます。

実際には、ローラーアイロンなども駆使して折ります。

 

あらかじめ作っておいたベルトループ。

1/4インチ以上3/8インチ未満という、ジーンズなどに比べればかなり細いループです。

あらかじめ身頃の上側もアイロンしています。

いよいよステッチです。

工程表ではcに地縫いしてからひっくり返してダブルステッチとありますが、参考にしたオリジナルを見ると地縫いはしていません。

という事でオリジナルに習い、直接、身頃と腰裏を合わせてステッチしていきます。

ところどころで、ベルトループを挟み込みながら縫っていきます。

上端のステッチが終わりました。どこかで見た光景・・・そうです、ジーンズのベルトループ付けとおなじ、通称「バンザイループ」です。

現代では、オートベルターという、ベルトループを切って、折って、カンドメまで自動でするミシンがあるため、あまり見なくなった仕様です。

当時は工夫に工夫を重ねた仕様だったのでしょうが、今となっては手間がかかる仕様です。

上側のステッチの左前身端。

ここも少し、縫い残しておいて・・・

いよいよ、先ほどのヒヨクにステッチを入れなかった部分が役立ちます。

腰裏の先を・・・

ヒヨクの裏側に入れて・・・
入れ終わり

ステッチをかけます。

このように、始末にこだわるので、多少のステッチ継などは気にしない・・・というのが、本来のミリタリートラウザーの縫製仕様です。

今回はあえて、それを再現することにより、無骨な雰囲気を出すよう努めています。

最後に、下側のステッチを入れていきます。

これでほぼ完成です。

最後にカンドメを。

実は、この画像は後から撮ったものです。針に糸が通っていませんが、雰囲気で。

裾の始末をして完成です。

 

 

How to make them?

 

Detail-各部詳細

 

 

Detail After Washed
各部詳細 洗い後

     

 

Look

Lot800 Lot801

 

How to make them?

 

 


 

Workers