真ん中が少し盛り上がったベルトループ。これも諸説あって、オリジナルは本来の幅よりちょっと広い裁断生地を縫って、真ん中が「盛り上がってしまった」という説があります。
それをデザインととらえ、わざわざ「中盛りラッパ(金具)」を作ってしまうあたりが、日本人の気質です。
リベット裏もそう、フロントのステッチを一部、裏から縫ったりするのもそう。すべて、全体的に「のぺっと」した感じにならないよう。古着を昔見たときの立体感というか、豊かな雰囲気。あの雰囲気を出したいがためにこういう、細かすぎる部分に凝る。
それを、実物になるべく同じように・・・という「レプリカ」という考え方もあれば、その要素を抜き出して「ここはこれ、あそこはこれ」とデザインに活かす、WORKERSのようなやり方もあります。 どちらにしろ、20世紀最後の日本で勃興した、奇妙な服飾文化です。
勃興の原因は、それだけ、日本が「平和」である意味「貧しくもあり」「豊かでもあり」だったからではないかと思います。
まず、平和でなければ、このようなある意味「どうでも良いこと」に価値は見出しません。
次に「貧しくもあり」は、ミシンにしろ、織り機にしろ、設備更新があるときからそれほど強烈に行われなくなった。
「豊かでもあり」は、そんな風に古い設備を使って、ゆっくり、細かな部分にこだわったもの作りをしても買ってくれるエンドユーザーが少なからず居た。
日本人の気質。平和、戦後復興、好景気からの不景気、そういう微妙な条件のもとに出来上がったのだろうなと最近想像します。そんな時代を生きられて、製品を企画できる私はラッキーです。
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