H.D.Lee

そで口は長めの剣ボロ始末。カフス付けには数多くピンタックが入っています。

これは、袖を太く、ゆったりと作りながらもそで口では適当な太さにするためには大きな寸法差が出ます。それをピンタックを多くすることにより始末したためです。

型紙・シルエットが縫製の方法を決める、良い例だと思います。

 

表からみるとダブルステッチでカフスがつけられていますが、裏から見るとステッチは身頃に落ちている一本だけです。

これは、袖口にフラシ芯という接着のない芯をつける事が関係しています。

まず二本のステッチのうち、袖先に近い方をカフスの表と芯の据え付けだけのためにかけます。

それから、カフスを地縫いして形作り、最後はカフスの裏を地縫いして表から落としミシンをかけています。

最後の工程は、何も地縫いして落としミシンにせずとも、アイロンで追って一発づけすることもできるのですが、何か、企画者に意図があったのだろうと思います。

想像ですが、一回地縫いを多くかけることにより表のステッチが切れた時にもすぐにカフスが外れないようにしたかったこと、また無数のピンタックを入れるのには地縫いしながら入れていくのが最適な方法であったためだと思います。

カフス周りのステッチがコースアウトしているのも、最終工程でカフス付け側を自由にしておきたかったからにほかなりません。

 

このように、たった一か所でも昔の人の工夫がわかります。この瞬間、何十年も前の誰かと会話しているようで、ビンテージを見ていて楽しいと感じる瞬間です。

 

 

 

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