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リーバイスに関する書籍の中で、最高傑作と言っても過言ではない一冊。 「毎朝9時に、彼はユニオン・スクエアに臨むパウエルストリート317番地のわが家を後にする。途中、通りの向こうのニュースタッターブラザーズ(Neustadter Bros)や隣のデイビッド・バックマン者に立ち寄って、世間話をすることもある。両方ともいいライバルだった。」(同書P6より抜粋) といったリーバイ・ストラウス自身の抒情あふれる描写から始まり1970年代までのリーバイ・ストラウス社の紆余曲折を数多くの当事者インタビューをもとに描いています。 1970年代にはまた存命であったリーバイストラウス経営陣の第三世代、ウォルターハースシニア、ダニエルコシュランド、さらには伝説の工場長、ミルトングランボーン、その工場で働いていた女工さんに至るまで、インタビューは多岐にわたります。 リーバイ・ストラウス、ヤコブ・デイビスといった、広く知られるジーンズの発明に始まり、リーバイ逝去後、第二世代末期には早くも経営に陰りが見られます。 それを立て直したのが、娘婿コンビ、ウォルターハース、ダニエルコシュランド、そして大抜擢されたミルトングランボーンです。 ヤコブ・デイビスの息子、サイモン・デイビス(後にベンデイビスを創業)との確執など、耳に優しいだけではない、経営を続ける中での衝突までも描かれています。 小売・卸売商であったリーバイストラウスがいかにしてジーンズ製造を主軸とする企業として成長したのか、そこにはどのような偶然、必然があったのか。
また、大恐慌を乗り切ったのか。大恐慌中、受注減により工場で縫うものがなく、J.C.Penneyの製品を縫うも、到底、利益の出る仕事にできなかった話なども登場します。 同社は、ウォルターハースシニア/ダニエルコシュランド体制以降、徹底して品質にこだわり、その商品の定価はあくまで、製造にかかるコストからの積み上げで決定していたからです。そのため、工賃仕事である相手先ブランドによる生産では、利益の出る構造ではありません。
こういった、経営的な内容もさることながら、一番心に残ったのは、70、80になり、退職したかつての同僚が集まり、そこにウォルターハース、ダニエルコシュランドも登場して同窓会を開くエピローグです。 ごく小さな、製造業の持つ家族的な雰囲気。 私自身も、ごく小さな規模の製造業に身を置く人間ですから、つい自分に置きなおして見てしまうので、このシーンは何度読んでも胸が熱くなり涙が出ます。 やはり、手を動かし、物を作る仕事、スモールビジネスの大変さ、一方で家庭的なかけがえのない雰囲気。 ありきたりの言葉ですが、ほんの少し前の世界にはどこにでもあったような「古き良き」時代の空気も感じられる一冊です。 ここまで詳細に、製造業の裏側が記されるのは珍しいことです。 製造業から始まり、20世紀のアイコンにまで昇華した5ポケットジーンズを製造していたリーバイスであるからこそだと思います。
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